コロナ禍の前、サンフランシスコの米国糖尿病学会会場での思い出です。
ちょうど、「肥満治療のセッション」が大会場でありました。
時期は、ちょうど3年前の6月、今頃の季節でした。
その時の座長の言葉に、しびれを感じたのは、忘れもしません。こんな言葉でした。
「 みなさん、みなさんが昔、糖尿病医療を始めた頃は、糖尿病は「疾患」だとは思われず、ただの、ぜいたく病(やまい)、としか認識されていなかったでしょうか?
そうなんです。かつて、糖尿病は、ただの、食べ過ぎ、運動不足がおこす事象であり、病気ではない、とすら思われていたことがあったのです。治すべき治療がなく、ただただ、怠け者で、ぜいたくな人がなる病気だと誤解されていました。
ところが、今となっては、どうでしょう?
糖尿病は、まさしく「疾患」であり、それも、メジャーな疾患として認識されています。もはや、誰も糖尿病を、ただの、ぜいたく病、と考える人はいなくなりました。
それは、糖尿病が治せるようになったからです。薬の力が進歩したからなのです。
それと、同じことが、「肥満」という事象でも、起こり始めているだけなのです。
「肥満」は、ただただ、ぜいたくな、怠け者がおこす事象であり、「疾患」ではない、と考えている人が、まだ、多いと思います。
ところが、そこに、薬の力が作用し、治せる事象になったのです。ですから、今では、「肥満」は、れっきとした「病気」なのです。
ですから、「肥満治療」は、かつての「糖尿病治療」と同じ道を辿っているだけ、と考えてはいかがでしょう。
私は、そう考えると、このGLP1ダイエットは、かならず、そういう糖尿病の治療の歴史を、しっかりと心得ており、同じ志をもつ医師が、治療にあたるべき、と、そう考えるのです。」
そんな開催の言葉だったように、思い返しています。これが、正直、私が1983年に、大学を卒業したての頃、「糖尿病なんて、なんてマイナーな病気を専攻するの?」と言われていた過去の思い出と、かぶさりました。逆に、だからこそ、自分が始めるべきだという決意にかわったわけです。