新薬がバラダイム転換を起こす
出典 こんなによくなる!糖尿病
鈴木吉彦 著 朝日新聞出版から、引用連載を開始します。
かつては、「オレンジブック」と言われて、かなり書店で売られた書籍です。対象は、本来は、糖尿病患者様向けの内容です。ですが、GLP1についての文章、文節などは、役立つと思います。当院の担当ナース達が、アップしますので、ご愛読ください。 院長
本日から連載開始。
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こんなに良くなる糖尿病! 驚きの「インクレチン」新薬効果
連載
研究と治療という両面から、私は糖尿病と長いこと格闘してきたわけです。しかし、いまほど糖尿病の治療に対して希望と興奮を感じるようなことは、これまでにありませんでした。
なぜ、それほど興奮しているのかというと、次のようなことを患者さんに言うことができるよう になってきたからです。
「真の意味で糖尿病を治療する 、 新しい薬が使われ始めました ! 」
「この新薬は、 いままでの治療につきものだった数々の問題をクリアしています ! 」
「そう遠くない将来 、糖尿病治療に革命的な変化が確実に起きます ! 」
医療や科学の世界には 「パラダイム」という言葉があります。時代を支配する考え方の枠組 み」などという意味があります。その分野に携わる誰もが 「それは当然のこととして」といった感覚で受けとめている雰囲気のことで、かんたんに言えば 「常識」と似ているかもしれません。
これまでの糖尿病の医学や医療の世界には、「糖尿病は不治の病である」というパラダイムがありました。これは、本編で詳しくお話しする 「高血糖の記憶」という体のしくみと関係しています。 糖尿病かどうかの判断基準となる値を努力して下げても 「高血糖の記憶」が残ってしまい、結局は 糖尿病による合併症が起きてしまうということがありました。いわば、洋服に付いた染みを、いくら洗い落とそうとしても取れないようなものです。それを、私ども医療従事者も、糖尿病と闘っている患者さんも 「それは当然のこととして」と、なかば諦めていたのです。
しかし、この本で紹介する新しい薬を使えば、「高血糖の記憶」という染みを効果的に消せることが、徐々にわかってきました。こうなると、糖尿病治療のパラダイムも変わってきます。「糖尿病は不治の病である」というパラダイムが、「糖尿病は治療できる病気である」という新しいパラダイムに移ってくるわけです。
新しいパラダイムの下では、「自分は、ここまで値を下げることを目指そう」と、患者さんが目指す状態を自らで選ぶこともできるようになります。あるいは、これまでの糖尿病の治療に欠かせ なかった運動や食事の取り組みも 、「“主 ” は薬による治 療 。 “ 従 ”として運動療法と食事療法」といったように、位置付けが変わってくることになります。
出典 こんなによくなる!糖尿病
鈴木吉彦 著 朝日新聞出版