なじみが薄い割には重要なビタミンK
「 完璧活用 ビタミン BOOK 」の 連載
ビタミンKは、血液の凝固に欠かせないビタミンです。重要なビタミンである割には、一般的にはあまり知られていません。それは、薬理作用の適切な利用法が難しく、「要指示薬」として医師の処方がないと買えないからでしょう。
ビタミンKの働きをもつ物質は、化学的に合成されたものを含めるとK₁~K₇まであります。天然にはK₁(フィロキロン)とK₂(メナキノン)の二つしかありません。合成品の中ではK₃(メナジオン)が生理的な効き目が高いといわれています。
いずれも脂溶性で、加熱、酸化には強いのですが、アルカリや紫外線には弱いという性質を持っています。
K₁は主に植物の葉緑体で作られる黄色の粘りのある物質で、天然には1種類しかありません。これに対してK₂は微生物が合成し、常温では黄色の固体で、納豆などの発酵食品に多く含まれ、構造や生理的な効き目が少しずつ違う仲間がたくさんあります。人間では腸内細菌がこのK₂の一部を生み出しており、K₁も多くの食品に含まれているため、滅多なことでは不足しません。
ただし、ビタミンKの吸収を妨げる抗生物質を使い続けている人や、腸内細菌叢が発達していない乳児などでは不足することがあります。また、ホルモン剤にも弱く、妊娠中にホルモン剤を飲んだ女性から生まれた赤ちゃんの1000人から1500人に1人は、K不足による頭蓋内出血を起こすこともあります。
出典 完璧活用 ビタミン BOOK
鈴木吉彦 著 (株) 主婦の友社 発行