ナイスコントロール ガリクソン投手からのおくりもの 連載(6)
しかしその内に、病院の廊下で、目がつぶれたり、足を切断するなどの合併症を悪化させてしまった人とスレ違いました。そういう時、僕の背中には冷汗が流れます。でも、よく聞くとそういう患者さんはむしろ成人型糖尿病で治療を放置してしまった患者さんが多いらしいのです。そしてインスリン注射を拒絶して、自ら合併症を進行させてしまったらしいのです。
治療を放棄するなんて信じられない、と最初は僕も考えました。でも糖尿病の場合、特に成人型の糖尿病患者さんは、ついつい症状にきづかないでいたり、気づいてもたいした症状がないために放置するというのは非常に多いらしいのです。この為、長年に渡り高血糖状態を続けて、しまいにはその後遺症というべき合併症を起こしてしまうのです。
僕はこれを知って自分だけはなんとしてもそのようにならないように、できる限りの努力をしなければ、と覚悟しました。決して糖尿病から逃げ出すことはできないのです。そしてもっともっと治療について勉強しなければいけないと考えました。そうしなければ不安でいられなかったのです。
そして治療としてインスリン注射以外にも、食事と運動の管理が必要なことも知りました。なかでも、食事を管理することが最も重要で、食事からとられた余分なカロリーはそのぶん血液の中にたまり、高血糖となり現れます。ですから僕ら糖尿病患者はできるだけ余分なエネルギーを体内にもちこんではいけないのです(これを食事療法といいます)。しかし、この食事の制限というのは最低限のエネルギーに抑えるということだけで、特別な病人食を食べなければいけないとか、必要以下のカロリーに抑えていつも腹をすかせていなければいけない、とかそういうものではありませんでした。むしろ一般人にとっては、健康食ともいえる普通のダイエットをすることだったのです。
ナイスコントロール!―ガリクソン投手のおくりもの
ビル・ガリクソン (著), 鈴木 吉彦 (著)
医歯薬出版株式会社
supported by 放射線技師 H