肥満促進作用にもGLP1は使えます。
場所が終わって、お相撲さんたちが強くなって、また外来にこられます。10kg太って、HbA1cが10%前後から5%台になって外来に戻ってきてくれる力士は数多くおります。血糖コントロールを改善すること自体が体重が増える因子になっているという事実です。
HbA1cが10%を超えれば、普通は「痩せます」。ですから、HbA1cを5%にすることで、「太った」あるいは「本来の力士の姿にもどった」だけにすぎません。
お相撲さんのように、食べることが仕事で、かつ、太ることが仕事であっても、胃の排泄速度が低下せず、食欲中枢も抑制しなければ、GLP1は膵臓に作用し、インスリンを分泌する分、脂肪の分解をおさえ肥満を維持できるという理屈です。
この時に用いるのはDPP4阻害剤という内服でGLP1を高める治療です。GLP1受容体作動薬ほど高濃度にはしません。食欲を抑制するレベルのGLP1濃度を高めるようにはせず、せいぜいDPP4阻害剤でGLP1を高めるだけにします。
こういう例から、GLP1を用いた臨床は、必ずしも痩せる場合にだけ利用するのではない、ということを理解していいただければと思います。GLP1医療は時には、他との組み合わせで太ることを助けることもあります。ですから、なおさら「臨床」(プラクティス)の技術(テクニック)が必要です。
GLP1=やせるホルモン、と完全イコールにしているのは、本当にGLP1医療の臨床を知らない一部の医師だけです。