BBB を通過する? 通過しない?
BBBとは、Blood Brain Barrier、日本語では、脳血流関門の事を示します。
特に、GLP1受容体作動薬の体重減少作用については、脳への直接作用があるか、ないか、が議論されており、2014年には、まったく脳に受容体がない状態(中枢神経特異的欠損)状態では、体重は減らない。脳の迷走神経刺激に対しても、抑えた場合には、やや体重は減るが、全体を抑えるほど減らない、という報告がなされています。
J Clin Invest
. 2014 Jun;124(6):2456-63. doi: 10.1172/JCI72434. Epub 2014 Apr 24.
Neuronal GLP1R mediates liraglutide's anorectic but not glucose-lowering effect
Stephanie Sisley, Ruth Gutierrez-Aguilar, Michael Scott, David A D'Alessio, Darleen A Sandoval, Randy J Seeley
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24762441/
(free PMC articleなので、誰もが読めます。)
そうなると、GLP1受容体作動薬が、本当に、BBBを通過するのか? 通過しないのか? が疑問になってきます。それを検証した研究があります。それについても、証明がなされています。(下図は、左が野生型。右は、GLP-1受容体欠損のマウス)
では、BBBを通過するGLP1受容体作動薬は? 証明されている薬剤は? という疑問がでます。2020年、現在、それが、わかっている薬剤を下に列記します。
Lixisenatide BBB通過する (商品名:リキスミア)
Exenatide BBB通過する (商品名:バイエッタ)
Exenatide-LAR BBB通過する (商品名:ビディリオン)
Liraglutide BBB通過する (商品名:サクセンダ、ビクトーザ)
Semaglutide BBB通過する (商品名:オゼンピック)
Dulaglutide 通過するか、わかっていない。 (商品名:トルリシティ)
そして、
これによって、トルリシティのほうが、サクセンダより、弱いし、トルリシティでは、体重が減りにくいという学問的な理由にもなっています。トルリシティだけが、分子量が大きいというのが、多くの学者達の見解です。
PS.
とはいえ、トルリシティを開発し、そして、販売しているイーライリリー社こそ、次の、GIP/GLP-1受容体作動薬を準備しているというわけですから、これらの薬の戦いは、まだまだ、数年は続きます。