脚気の治療で発見されたビタミンB₁は、糖質の代謝と神経の調整に関わっています。
「 完璧活用 ビタミン BOOK 」の 連載
日本にはかつて、例えば1923年(大正12年)1年間に約3万人もの死者を出す病気がありました。それは脚気です。現在でこそ脚気はビタミンB₁欠乏症としてしられ、滅多にお目にかかれる病気ではなくなりましたが、当時は結核と並ぶ二大国民病だったのです。
この脚気の治療ビタミンとして、ビタミン学の初期に発見されたのが、ビタミンB₁です。
ビタミンB₁とは、化学名でいうサイアミンという物質のことです。水溶性で、人間の体の中では合成できません。一度にいくら大量にとっても、血液中の濃さがある一定の飽和量に達してしまえば、余った分は全て尿の中に排泄されてしまいます。
さて、このB₁の働きですが、何と言っても糖質代謝の仲立ちをする酵素を助ける(補酵素の働き)ことにあります。もっと簡単に言えば、体の中で糖質を分解してエネルギーに変えるのに必要なのがB₁なのです。ビタミンB₁が不足すると、糖質の分解が途中でストップし、エネルギーの生産がスムーズに行われなくなります。中間代謝物である乳酸などの疲労素もどんどんたまってしまいます。
脳や神経は、糖質からできるエネルギーを必要とすることから、ビタミンB₁は、神経系の働きの維持や調整にも大きな役割を担っています。また、消化機能を刺激したり、消化液の分泌を促進する働きもあります。
出典 完璧活用 ビタミン BOOK
鈴木吉彦 著 (株) 主婦の友社 発行