ナイスコントロール ガリクソン投手からのおくりもの 連載(12)
それに日本人は他人と違うことはなにか恥ずかしいことだと考える傾向があるようですが、アメリカではそれをユニークと考えてくれる傾向があります。そして糖尿病がありながらも頑張っていることは、尊敬に値することだと、本当にそう考えてくれる人が多いということも助かりました。
しだいに糖尿病をもった生活に慣れてきました。食事についても最初の2年間はかなり厳格に制限していたけども、その内、だいたいの目安で自分にあった食事を選択することができるようになりましたし、特に自分のコンディションにあった食べ方や生活様式(ライフスタイル)が身についてきました。
もちろんハイキングやピクニックにもいきました。それから僕の趣味は魚つりでしたから、よく魚をつりに池を捜してあるきました。僕はどこにいっても池さえみつければ糸をたらしたくなるくらいの魚気違いです。野球選手にならなかったら釣りのガイドでもやっていたかもしれません。
その内に、いろんな人が自分と同じ病気になっても頑張っていることがわかりました。そしてプロスポーツプレイヤーとして活躍している人が沢山いることも知りました。その人達のことを考えて随分勇気づけられました。あの人達にできて、自分にもできないはずがないと、、、。
21歳の時に、ボビークラークとよく会うようになりました(ボビークラーク;アメリカのプロフットボールプレイヤー)。彼は全く普通の人で、普通に僕に接してくれました。僕らはあまり糖尿病とは関係のないことばかり話していましたが、僕にはとてもこれがうれしいことでした。
病気と戦いながら生きていくことは自分を強くしていることなんだ。病気が怖いから弱い人間だ、なんて思ってはいけない。怖いのは普通の人間の心なのさ、、、、クラークが話してくれた話の陰には、ひとつひとつそんな思いが漂っているような気がしました。
そして最後に、”糖尿病だという緊張感が自分のプロ意識を増しているんだ”と話してくれて、僕はそれを聞いて感激しました。同じ病気を持って活躍している人と話すことが、これほど自分にとって役立ち、勇気づけられることだとはそれまで知りませんでした。このようにしていく内に僕には、どんな他人の話でも自分のエネルギーに替え、それに感謝する気持ちが生まれました。そして、もし将来、僕が野球選手として成功したら、糖尿病の子供たちに僕自信の体験を話してあげれば、きっと勇気づけられるだろう、と考えました。僕としては、少しづつ大人になっていく気持ちがしたものです。
ナイスコントロール ! - ガリクソン投手のおくりもの
ビル・ガリクソン (著), 鈴木 吉彦 (著)
医歯薬出版株式会社
supported by 放射線技師 H