ナイスコントロール ガリクソン投手からのおくりもの 連載(34)
4 インスリンを注射しているから運動するのは怖い、運動させるのは怖い、と考えている人へ (ガリクソンから)
糖尿病になりインスリン注射を始めた時、まわりの人たちは低血糖を怖がり、糖尿病の子供たちや青年たちに運動させるのをいやがります。
ひどい場合には、遠足や体育授業の水泳などを禁止する先生もおります。このような先生たちは、もっともっと糖尿病のことを勉強するべきだと思います。またそのように、まわりから言われて不安がっている患者さん自身も、担任の先生に安心してもらえるように、糖尿病のことをもっと勉強し、自分のことは自分で責任を取れるようになっておくべきです。
糖尿病は治療として運動しなければいけないのですから、運動を禁止するのは、よほどきけんな物ではない限り誤ったやりかたです。とはいえ、この僕も病院から退院したばかりのころは、とても運動するのが不安でした。しかし、少しずつ慣れていけば、低血糖のこともわかってくるし、それを予防する技術もしだいに身についてきます。
問題は恐れてばかりいないで、いろいろとトライしてみることだとおもいます。そしてよくまわりの先生や家族に自分の状態を説明し理解してもらい、援助をしてもらうように心がけるのです。こうしてがんばっていけば、そのうちに低血糖を起こさないようにすることができ、他の人と同じか、それ以上の運動だってこなせることができるようになります。
注1:現在、日本の約10%の学校は、普通の教科体育に糖尿病の子供たちを参加させるのを制限しており、マラソンや水泳のような激しい運動を含めると約20%の学校が運動を制限しているといわれています。そして、小学校よりも中学校や高校で運動制限している学校が多いようです。これは小学生よりも中学、高校生のほうが運動が激しくなり、低血糖の危険が高くなるためと思われます。
しかし、低血糖というのは十分に教育してあれば、その症状によって、もしくは運動前に血糖値を知っておくことによって、それを予知し、捕食によって十分に予防できるものなのです。ですから、学校側が低血糖を心配しすぎて、体育への参加を制限するのは適切な対応とは思われません。もし学校側が不安な場合には、危険の少ない運動から徐々に始めさせてみてください。できれば、血糖値を自己測定させながら、運動させてみてください。そうすることで、ひとつずついろんな状況を克服していき、自信がついて、次のステップに進むことができるようになるでしょう。
注2:インスリンを注射している子供がいる学校の約半数が、低血糖を経験しているようです。その70%は授業中に、約30%は体育の時間、またはクラブ活動の時間に起こしたと述べています。そして、90%以上の学校が直ちに、ジュースなどを与えたとし、適切な対応をしていますが、残念ながら10%の学校では、対応に苦慮してしまっています。これらの学校の先生たちは、医師と連絡を取り、その子供の状況について、よく説明を聞いておく必要があります。
注3:修学旅行などの宿泊行事についても、糖尿病の子供たちは自分でインスリンを注射し、治療の評価をできるように教育されていますから、心配なく参加できるはずなのです。現在約10%の学校が、旅行中、注射をさせにくい、低血糖が興ると困る、食事制限があるので困る、などの理由で、宿泊行事のスケジュールによっては参加を許可していないようです。しかし、これらは学校のちょっとした配慮で対応できるものが多く、これもよく担当医師との相談のうえ、判断していただきたいもので、画一的には決めていただきたくないと思います。
注4:学校側が糖尿病の子供たちに対応できにくい大きな理由に、医療側や家族からの、担任の先生への説明不足というものがあります。ですから、医師はもちろんのこと、家族もその子の糖尿病の状態を把握し、積極的に担任の先生と相談してください。
ナイスコントロール ! - ガリクソン投手のおくりもの
ビル・ガリクソン (著), 鈴木 吉彦 (著)
医歯薬出版株式会社
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