ラマダンにおけるGLP1治療の価値とは
欧州糖尿病学会(バルセロナ、2019)のP772からの話題です。
ラマダンの時に、1日1回注射のGLP1注射製剤リキスミアと基礎インスリンの配合剤(LixiRam) か、あるいは、リキスミアとインスリンとの併用療法を行っている群と、1日1回注射のインスリンとSU剤とを使っている群との比較試験の結果でした。
着目点は、低血糖の頻度と、それが起こる時間帯を議論されています。
結局は、リキスミア、つまりGLP1治療を併用しているインスリン群の低血糖頻度は少なかったという結果の発表でした。確率は、1ヶ月のpatient-monthで計算して、0.01 であり、ほぼ無視できるものでした。
それに対して、インスリンとSU剤を使っている場合には、0.23と極めて高い数値でした。
低血糖が起こる時間帯は、GLP1ダイエットをしている人では、ほとんどなくて、かろうじて、20時から22時の間に、少数例、散見される程度だったわけです。
ラマダンは、究極の、断食ダイエットに近いですが、そこでも、GLP1の低血糖にならないということが、いかに画期的なことなのか、を、サノフィという製薬会社が証明したかった、という学会発表でした。
製薬企業サノフィ社がいいたいことは、一言でいうと、簡単です。かりに、ある程度、体内にインスリンが流れている状態(インスリン抵抗性があるような高インスリン血症の状態)であったとしても、そこに、GLP1を追加したとしても、それでもって、断食しても、低血糖は起こらない、ということなわけです。
もっと、簡単にすると、肥満が多い中東で、高インスリン血症がある人において、断食ダイエット中でも、GLP1ダイエットは安全に使える、ということの内容になります。
たまーに、「GLP1ダイエットをして、低血糖にはなりませんか?」という質問をうけることがあります。そういう質問がきた時の回答には、この学会発表は使えます。
ラマダンのような断食ダイエットをしている人たちでも、低血糖にはならず、GLP1ダイエットの思想は、安全であり、低血糖にはならないこと、それ自体が担保されている内科的な治療法である、ということを証明したという意味で、価値ある内容でした。
糖尿病の学者たちって、理屈ぽいですよね。すみません。これが、糖尿病を専門とする内科医師や、それをとりまく製薬メーカー達の仕事(本業)なものですから。
GLP1を扱うプロフェッショナルは、あくまで、糖尿病専門医、糖尿病の薬を開発している製薬メーカーだということだけ、ご理解していただければ良い、と、私は個人的には思います。