肥満で中性脂肪が上昇、HDLは低下。
BMI(Body Mass Index)が増加すると中性脂肪(以下TG)値は増加し、HDLコレステロール(善玉コレステロール:以下HDL)値は低下します。これが肥満による脂質異常症の特長です。
糖尿病やメタボリックシンドロームがある場合、体重やウエスト周囲長が減ると、HDLが上昇し、LDLコレステロール(悪玉:以下LDL)やTGが低下します。つまり、やせると脂質異常症は改善するのです。
脂質異常症の基本的な治療は、総エネルギー摂取量を減らし、身体活動量を増やして標準体重を維持することです。3%以上体重が減ると、TGやHDLが改善します。
脂質異常症を改善する食事療法についてお話しします。
●LDLが高い場合。
飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やす。
●TG値を下げたい。
糖質やアルコールを制限し、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取を増やす。
●HDLを上げたい。
トランス脂肪酸摂取を避ける。
脂肪酸とは何のことでしょう?脂肪酸は下記のように分類されます。
脂肪酸 →「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」
不飽和脂肪酸 →「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」
多価不飽和脂肪酸 →「n-6系脂肪酸」と「n-3系脂肪酸」
脂肪酸はどんなものに多く含まれているのでしょう?
<飽和脂肪酸>
●バター、肉、ココナッツ油、ヤシ油など。
<不飽和脂肪酸>
●一価不飽和脂肪酸:オレイン酸が主成分、オリーブオイル、ひまわり油、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツなど。
●n-6系脂肪酸:リノール酸が主成分、ひまわり油、大豆油、コーン油など。
●n-3系脂肪酸:
* α−リノレン酸が主成分、ごま油、なたね油、シソ油、くるみなど。
* ドコサヘキサエン酸(DHA)が主成分、あんこうのきも、まぐろの脂身、
さば、うなぎなど。
* エイコサペンタエン酸(EPA))が主成分、あんこうのきも、さば、
うなぎ、さけなど。
●トランス脂肪酸:水素添加油脂(水素添加という技術を使って固められた液体の植物油や魚油)を使った食品のことで、マーガリン、ショートニング、お菓子、コーヒー用クリームなど。
脂質異常症を改善する運動療法についてお話しします。
運動療法では、継続的な身体活動や有酸素運動が有効です。運動するとHDLコレステロール(善玉)が増加します。強度から中等度の有酸素運動を毎日30分以上続けると効果的です。
HDLを上昇させるには、毎日の運動持続時間を長くすることが効率的で、全体量としては週に合計120分くらいが良いとされています。
喫煙はHDLコレステロールを低下させ、TGおよび血糖を上昇させてしまいます。動脈硬化予防のためにも、禁煙をお勧めします。
糖尿病療養指導士 臨床検査技師 著
出典:肥満症診療ガイドライン2016
編集 日本肥満学会
ライフサイエンス出版