ナイスコントロール ガリクソン投手からのおくりもの 連載(22)
ガリーVSドクタースズキ
○ 大リーグ101勝の現役投手で来日(2)○
Dr.鈴木 糖尿病が奮起材料になるなんて、糖尿病でない人にはわからないだろうね。
ガリー そうかも。日本に来たときには、みんながそういう態度を示したよ。糖尿病があるだけで、本当に野球ができるのかってね。あまりにそういう質問をうけたから、僕もびっくりしたのさ、こんなに糖尿病がびっくりされるのかってね。
Dr.鈴木 ということは、日本では糖尿病というと、暗くて何もできない病人だと思われているということかな?
ガリー そう。アメリカでも十年前は、たしかに同じようだったけどね。でも、今はみんながオープンになってきて、糖尿病といったってそんなにびっくりされないんだよ。そうそう知ってる、マルニ・タイラー・モアという女優さんを?
Dr.鈴木 ごめん、知らない。
ガリー 『普通の人々』っていう映画に出た名女優さ。僕は彼女のファンなんだけど、彼女も糖尿病さ。たくさんいるよ、アメリカには、糖尿病の有名人が。
Dr.鈴木 残念ながら日本ではそのような人は少ないんだ。いや正確には、それを公に話している人が少ないのさ。だからだと思うんだけれど、なおさら日本では、自分が病気だということを他人に話すことは、みんな怖がっているよ。その後、どう思われるかわからないしね。
ガリー もし、『僕は実は糖尿病なんだ』なんて唐突にいいだせば、あいてはだれだってびっくりして後込みしてしまう。でもそれではいけない。そこでぼくはこうして居るんだ。『自分は体に合わないものや食べ過ぎに、ちょっと気をつけているんだ』という話から始めるようにしている。
Dr.鈴木 そうすれば、相手だってそれほどビックリしないよね。
ガリー 自分の置かれた状況をこのように詳しく説明するのは根気がいるけど、大事なことなんだ。それは自分にとっては与えられた試練だと思っているよ。
Dr.鈴木 でも、なかなかきっかけがつかめない人が多いようだね。もし君がダッグアウトのなかでインスリンを注射してしているのがテレビに映って、そして君が完封シャットアウトをしたら、日本中のピッチャーたちはインスリンを注射したがるだろうね。
ガリー まあね。でもそんなことをしなくたって、みんながもう少し、人間の尊厳と糖尿病であることとの違いをわかってくれれば解決することさ。
Dr.鈴木 確かにそれをわかってもらえるようにするのは、僕ら医師の仕事なんだけどね。でも僕には力不足でまだそれができない。
ナイスコントロール ! - ガリクソン投手のおくりもの
ビル・ガリクソン (著), 鈴木 吉彦 (著)
医歯薬出版株式会社
supported by 放射線技師 H